不動産業界のタブーである「囲い込み」「売り止め」とレインズ(物件データベース)について

不動産業界において常に問題となっているのが「囲み込み」と「売り止め」についてです。この行為は、売却を依頼した売主に多大なる損害を与えるだけではなく、不動産仲介業者のあるべき姿である公正な取引を損なう行為です。

「囲い込み」や「売り止め」に関するポイントは以下の通りです。

  • 仲介手数料の両手取りや媒介契約の特性、広告費の所在によって引き起こされるもの
  • 両者とも意図的にお客様を紹介せず、自社で買主をマッチングさせようとする行為
  • 2016年のレインズ改正により、一定の抑止機能が働いていると思われる

この記事では、不動産業界のタブーともいえる「囲い込み」と「売り止め」の実態について、詳しく説明していきます。

「囲い込み」や「売り止め」の前提条件とは?

「不動産仲介業者の報酬って、仲介手数料だけだって知ってた?」
「もちろん知ってるよ!でも、取り扱う商品が高額だから、仲介手数料も100万以上になったりするでしょ?しかも、運よく売主と買主をマッチングできれば、報酬は2倍なんだよ?」
「え?2倍になるの?それなら売主には悪いけど、買主が見つかるまで我慢してもらうわね。」
「ダメダメ!媒介契約によっては、不動産業界が利用しているデータベースへの登録が義務だし、報酬のために意図的に物件紹介を操作するなんて、大問題になるよ!」

残念ながら、仲介手数料を売主と買主の両者からもらいたいがための「囲い込み」や「売り止め」が横行している現実があります。まずは、これらの問題の原因となっている、仲介手数料の仕組みについて、確認していきましょう。

仲介手数料は成功報酬である

不動産会社が仲介を行う場合に受け取ることができる仲介手数料については、売買契約が成立した場合にのみ発生する成功報酬です。売買契約が成立しなければ、それまでの営業努力は無駄になります。これも「囲い込み」や「売り止め」が横行する一因です。

そして、売買契約の仲介手数料については、売主に対しての成功報酬と、買主に対しての成功報酬が独立して存在しています。つまり、不動産を売却したい売主が不動産会社Aに仲介(物件売却)を依頼した際に、不動産を購入したい買主が不動産会社Bに仲介(物件探し)を依頼した際に、この両者がマッチングしたと考えてみましょう。成功報酬については、売主は不動産会社Aに支払い、買主は不動産会社Bに支払うのが当然であるといえます。

仲介手数料のからくりについて、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

不動産会社が丸儲けの「両手取り」とは?

しかしここで、売主からの仲介を依頼された不動産会社Aが、たまたま来店したお客様に希望条件が合うからと、この物件を提案して見事マッチングが成立したとしましょう。不動産会社Aは、売主からの報酬だけではなく、買主となったお客様からも報酬を受けとることができるのです。

買主からも売主からも手数料を受け取ることができる状態を「両手取り」と言いますが、この「両手取り」がしたいがために「囲い込み」や「売り止め」が横行する結果となっているといえるでしょう。

広告費は仲介手数料に含まれる

仲介手数料が成功報酬であることに加えて、広告費が仲介手数料に含まれるという矛盾した定義付けがあることも問題です。つまり、幅広く買主を探すために、ポスティングや折り込みチラシ、不動産ポータルサイトへの掲載などを行った場合、その広告費は自腹です。

自腹を切ったのにも関わらず、買主が見つからなかった場合や、他社が買主を見つけてきた場合にはどうなるでしょう。これまで負担した広告費は赤字となるのです。広告活動に力を入れたら入れた分だけ、「両手取り」を狙いたくなるといえるのかもしれません。また、広告費が自腹であることからも、後述する一般媒介契約では不動産会社が広告費をかけたがらないという理由にもつながっていきます。

媒介契約の性質が「囲い込み」「売り止め」を加速させる?

続いて、媒介契約の性質について、その盲点を説明していきます。

媒介契約とは?

媒介契約とは、主に売主が物件の販売を依頼する際に結ぶ契約であり、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類に分類されています。それぞれの違いは、不動産会社の義務規定と、売主の行動規制の強弱の度合いです。

一般媒介契約は最もライトな契約であり、不動産業界が利用している物件データベース(レインズ)への登録も不要、複数社との契約を結ぶことも可能ですが、専属専任媒介契約になるとデータベースへの登録は義務規定、専属専任媒介契約を結んだ不動産会社との媒介契約の締結は不可となります。

専属専任媒介契約の性質が「両手取り」を促す環境を作る

専属専任媒介契約の状態は、不動産会社が責任をもって販売活動を行うという期待の元で他社との媒介契約を禁ずる、つまりは売主からの報酬が契約期間(3ヶ月)の間は保証されるという状態です。そして、買主を広く募集することも重要であることから、データベースへの登録が義務規定となっており、広告などの販売活動についても7日間に1回の報告が必要とされているのです。

しかし、この環境を悪用したらどうなるでしょう。つまり、売主からの報酬が保証されている状態で、買主を自社で見つければ仲介手数料は両手取りです。本来は広くお客様を探し、円滑に売買契約を締結させる役割であるべきですが、物件を隠し、自社に来店をしたお客様だけに物件を紹介して両手取りをねらうことも可能です。まさにこの状態が「囲い込み」といえるのです。

レインズ(物件データベース)の盲点と対処方法

専属専任媒介契約で売主の報酬を確保した上で、自社で買主を見つけるためには、物件を「囲い込み」続ける必要がありますが、レインズへの登録義務がボトルネックになります。そこで「売り止め」という行為が横行しているのです。

レインズの盲点

レインズは不動産業者だけが閲覧できる上に、全国の不動産物件情報が集約されているという意味では非常に画期的なシステムでした。大手不動産ポータルサイトに掲載されている物件は漏れなくレインズに登録されおり、広告を出していない物件であってもレインズには登録されているというほど、全国の物件が網羅されているといっても過言ではありません。

しかし、悪意のある不動産会社にとっては、レインズに公開することで他社が買主を見つけてきてしまう可能性があります。そこで「レインズへの登録義務」を果たしながら「囲い込み」を実現する方法に行きつくのです。

つまり、レインズには登録してはいるものの、データベース見た他の不動産会社からの問い合わせを「先約が決まった」などの理由をつけて、意図的にシャットアウトするのです。これが「売り止め」です。まさに「登録」義務という盲点をついた、法令順守をしながら両手取りを実現する抜け道でした。

レインズの改正について

これまでの盲点を補完するため、2016年1月よりレインズに登録された専任媒介契約・専属専任媒介契約の物件については、業者ではなく売主自身が状況を確認できるようになるなど、大きな改正がなされました。

物件のステータスが他社からの紹介も受け付ける「公開中」ではなく、「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」となっていた場合に、売主にそれらの具体的な内容が報告されなければ、ステータスを虚偽設定としていることが判明することになります。この改正によって、囲い込みや売り止めの減少にどれほど効果が出ているのか、期待したいところです。

その他の対処法について

レインズの活用以外で対処法として考えられるのは、一般媒介契約で複数社に仲介を依頼する、事前に不動産会社の評判などを調べておく、買取保証などがある不動産会社を選ぶことなどが考えられます。

買取保証は買主が見つからなかった場合、仲介を依頼した不動産会社に責任をもって購入してもらうという保証ですが、相場よりも査定額が低くなることには注意が必要です。

おわりに:レインズをチェックしながら「囲い込み」や「売り止め」には十分警戒をすべき 

不動産業界によって、なかなか締め出すことができない「囲い込み」や「売り止め」でしたが、レインズの更改やインターネットの普及によって、それらの行為への対策が強化されつつあります。

売主の立場としては、「囲い込み」や「売り止め」状態にならないように、売却活動の具体的な報告をしっかり確認した上で、レインズへの定期的なチェックや整合性確認を行うよう、心掛けましょう。

この記事を監修した人

宅地建物取引士小林弘卓

長野県軽井沢生まれ、群馬県高崎市育ち。教員免許を取得したのち、教育関係の仕事に従事も、現場にて母子家庭や貧困家庭を目の当たりにし、何か役に立つことはできないかと決起。ファイナンシャルプランナー2級およびAFP、宅地建物主任者の資格を取得後、家計のやりくりから投資運用などお金のアドバイスだけではなく、様々なお悩み事を第3者の視点でアドバイスすることを目的とした「トータルアドバイズ」代表として活動。九星気学鑑定士としての人生相談も好評を得ている。

個人ブログ:https://ameblo.jp/total-advise-company/

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